「ウェブで(読者から)学ぶ」:「正しく問う」ことの大切さ

 刊行後十日ほどの間に、ブログやツイッターを通して、「ウェブで学ぶ」を読んでいただいた大勢の方々の感想やコメントに接することができました。これらを読ませていただきながら、私自身も感じること思うことが多々ありましたので、とても全部は無理ですが、本ブログを通じて少しずつご紹介していければと思います。


 まず今回は、日夜世界中を飛び回り、世界や日本を「より良い場所」にしようとしている多くの志ある人々や実務家たちと交流する中で、見聞きし考えられたことをご自身のブログで精力的に発信し続けておられる黒川清先生のご感想からの引用です。

 つまり、この本「ウェブで学ぶ」は、教育者には世界の新しい教育の動向だけではなく、自分たちに課せられた責任を知らせ、さらにこの責任を問うているのだ、ともいえます。


 しかし一方で、「個人のempower」の立場から言えば、教育を受ける人、学びの心のあるすべての人たちには、どんな教育を受けたいのか、世界にはどんな教育や学びの機会、新しいツールがあるのか、自分を育てていく発見の可能性などを積極的に問いかけている本であるといえます。


 本書を通して、梅田さんと私は、幾つもの問いを読者の皆さんに投げかけようと試みました。勿論、その過程において、私たちは自分たち自身に向かって、そしてお互いに対し、様々な問いを投げかけ続け、その一部は第三〜五章の対談部分に収録されています。


 本書では、オープンエデュケーションの進展やウェブの進化にまつわる様々な「物語」が語られていますが、これらの「物語」は、「いつ、どこで、誰が、何をした」という情報だけを伝えようとしているのではありません。私自身としては、「何故?」という部分、さらに言えばこれらの「物語」に関わった人々の「願い」や「思い」を日本の人たちに確実に伝えることが、実は一番大事だったのではないか、と今改めて考えています。それは、この「何故?」の部分が、今世界中の人々、そして日本の人々が必要としている教育の新しい姿を描き出していくのに大いに役立つ、と信じているからです。そして、この「何故?」の数が多ければ多いほど、私たちは、より理想的な教育の未来へ一歩ずつ近づいていけるのだと思います。


 本書の第五章に少しだけ出てくる、私の敬愛するメンターの一人であるジョン・シーリー・ブラウンは、自らを「Chief of Confusion」と名付け、自分の役割は、「人々が『正しい問いかけ』をするのを助けることだ」と言っています。それと同じ意味で、黒川先生には、ご感想を通じて、「『ウェブで学ぶ』が問うているもの」をより鮮明にするのを助けていただいたような気がして、とても嬉しく思いました。


 私の皆さんへの「大きな問い」は、「何故、オープンエデュケーションというものが生まれ、世界中に広がりつつあるのか?」ということです。さて、皆さんはどうお考えになりますか?