新たな挑戦の始まり

 皆さんは、新年をどのように迎えられたでしょうか。私は、この1月から京都大学の高等教育研究開発推進センターに教授として着任することになりました。連休明けからの仕事始めのために、ボストンからサンフランシスコ経由で大阪に向かう機中で、このメッセージを書いています。


 大学院博士課程に留学して以来、20年間近くにわたり拠点としてきたアメリカに住みながらこの先も仕事を続けていきたい、という思いもとても強かったのですが、近年の日本の困難な状況(とりわけ大学教育を巡る閉塞的状況)は、海の向こうからこれ以上看過ごしがたく、やはり「内側から多面的・多層的に変えていかなければ」と、(京都に移住するから、という訳ではありませんが)まさに「清水の舞台から飛び降りる」ような気持ちで意を決した次第です。


 アメリカでは南部・西部・東部と移り住み、職場も三回変わりました。その間に、世界中の色々な人たちと出会い、一緒に働いたり語り合ったり苦楽を共にすることを通じて、様々な刺激を受けながら学び続け、人間として成長し続けることができたのは、とても幸せなことでした。


 私は、これまで培ってきた世界的な視野や視点を堅持しながら、スピード感とフロンティア精神を持って、日本を拠点としつつ世界の中で進み続けていきたいと思っています。グローバル化・オープン化・流動化が進む世界の中において、教育機関としての日本の大学は、危殆に瀕しています。それはとりも直さず、そのような21世紀社会の中で日本の大学が、日本国内はもとより世界の何処にいても活躍できる実力や気概のある人材を育てられなくなっているからに他なりません。私は今後、長年の在外経験から得られた知見やネットワークを、京大の教育は勿論のこと、日本の高等教育全体を改革し進展させるために幅広く活かしていきたいと考えています。


 京大では高等教育開発論講座の教員も兼任するので、高等教育システム、オープンエデュケーションや教育イノベーションなどについて大学院生や大学生の皆さんに教え、共に学び考える機会もあり、これも大いに楽しみです。


 東京オリンピックの年に生まれた私は、今年は年男です。元気や自信を喪失してしまったかのように見える日本を再び「昇り龍」のごとく再興するため、教育界はもとより、各界の志と情熱を共にする人たちとダイナミックに連携・連帯し、尽力していきたい所存です。そしてその結果として、日本や日本人が今まで以上に世界に貢献し、世界から感謝・尊敬され、世界をより多くの希望と可能性と活力に溢れる場所にできれば、まさにそれが私にとっての本望だと言えます。


 最後に、いつも私を色々な形で励まし支えてくれる家族・友人・仲間たち、そして直接的・間接的に多くの学びの機会を与えてくれる世界中のメンターたちに、この場を借りて心から感謝の意を表したいと思います。新たな挑戦の始まりです。皆さん一人ひとりにとって、今年が実り多き素晴らしい年になりますように。