「グローバルキャリア」(石倉洋子著)を読んで - "Going Your Global and Open Jeep Way!"

 この4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン科(KMD)教授に着任された石倉洋子さんに、ご新著書「グローバルキャリア - ユニークな自分の見つけ方」(東洋経済新報社)をお送りいただきました。以前、政策研究大学院大学教授の黒川清さんとのご共著書「世界級キャリアのつくり方 - 20代、30代からの"国際プロフェッショナル"のすすめ」(東洋経済新報社)を読んで、大いなる共感とともに啓発されたこともあり、今回も読む前からとても楽しみでした。


 本書は「世界級キャリアのつくり方」とタイトルがやや似ていることもあり、読む前には、同じような主旨の内容かなと思っていましたが、ご本人もブログで書かれているように、タイトル中の「グローバル」には、「地域を越える」という意味だけでなく、「分野を幅広く考える」という意味も込められています。このことと関連して、「はじめに」の中にこんな一節があります。


「しかし、まだ人生始まったばかりなのに、ここであきらめてしまっては、これからの人生がつまらないものになってしまうのではないでしょうか。今のルールの中で、少しでもよさそうな道と思われるブランド企業の正社員や一見安定していると思われる官の仕事を探すのも、皆さんの選ぶ道のひとつです。しかし、今までのやり方の中での近道を求めるのでは、成熟市場でじり貧になる可能性が高い日本という国に縛られてしまうと思います。」


 この部分を読みながら、ふと「ジープ・ウェイ(Jeep Way)」の話を思い出しました。1946年2月、当時終戦連絡事務局参与として新たな日本の憲法づくりに関わっていた白洲次郎は、GHQの民生局長だったWhitney准将に宛てて書いた手紙の中で、「戦後の民主化された日本を創り上げる、という目的地を目指すための道筋として、空路(Air Way)でひとっ飛びしようとするアメリカに対し、ジープでないと進めないような曲がりくねった凸凹道である陸路(Jeep Way)を行くのが、日本人自らの手で日本を復興させようとするやり方としてふさわしい」という主旨の提言を図入りでしています。同様に、本書は「良い大学を出て、良い企業に就職する」ような"Air Way"よりも、道なき道を自ら切り拓きながら敢えて"Jeep Way"を進むことで、「幅広い能力や知識を身につけ、国内だけでなく世界的にも通用する自立した人材に自らを育てることができる」ということを訴えているような気がしました。


 全体を読み終えてさらに強く感じたのは、「自分を拡張し成長させ、新しいことに挑戦し続けること」によって切り拓かれる「充実した人生の可能性」を、石倉さんは若い人たちに一生懸命に伝えようとしているのだ、ということです。「どうすれば、より楽しく前向きに学び続け、働き続けることができるか」という問いに対する答えを見つけるための手掛かりやアドバイスが、「オープン化」や「ORをANDにする」などのキーワードと共に、本書の前半には数多く散りばめられています。さらに後半では、実際に自らキャリアを切り拓いてきた人たちの事例が豊富に紹介されていて、これらも若い人たちには大いに参考になると同時に、「自分もやってみようか」という「元気の素」になると思います。さらに、石倉さんご自身が通って来られた"Jeep Way"を、あらためて上空から俯瞰して書かれたのがPart 5です。読み応えがあります。


 嬉しいことに巻末には、石倉さんの「Dear Toru, I hope we can collaborate for the future generation.」という自筆のメッセージが記されていました。今、日本や世界が置かれている状況の中で、やはりグローバルでオープンな"Jeep Way"を進んできた者の一人として、これからも日本と世界の未来を担っていく人たちを出来る限り応援し続けたいと、あらためて意を強くしました。20代、30代の若い人たちだけでなく、若い心を持ち挑戦し続けたい思っている多くの人たちにも、「グローバルキャリア - ユニークな自分の見つけ方」は是非お薦めしたい一冊です。