「ウェブで学ぶ」刊行に寄せて

 梅田望夫さんとの共著書「ウェブで学ぶ」(ちくま新書)は、いよいよ今週刊行されます。週の半ば頃までには、日本各地の書店に並ぶはずです。

 本書「ウェブで学ぶ」は、「ウェブの進化」と「教育の進化」について、梅田さんと私が「志」を共にしながら、一緒に探究と対話を重ねていった軌跡です。(中略)
 現在のように社会構造が複雑化・流動化し、技術や知識の陳腐化も激しい世界では、「学校や塾や職場の『壁の内側』で教えられること」だけが学びの全てではなく、「学校を出たから、もう自分の学びは終わり」という訳にもいきません。そのような「個人が一生学び続ける時代」にふさわしい「一人ひとりの無限の可能性のための次世代教育環境」こそが、オープンエデュケーションなのです。アメリカ発のオープンエデュケーションは、初等・中等教育から高等・専門家教育に至るまであらゆるレベルの教育を網羅し、英語圏を中心に日本を含め全世界に急速に広がりつつあります。(中略)
 「教育とは、無限の可能性を信じること」だと、私は思います。人生を豊かにし、生き甲斐を手にする方法は、たくさんあります。「運」のように、なかなか自分の思い通りにならないものもあるでしょう。しかし「学ぶこと」は、そのための「機会」と「必要な助け」さえ得られれば、あとは自分の志や情熱次第で、かなり思い通りになるはずです。オープンエデュケーションは、そんな「学ぶ機会」や「よく学ぶために必要な助け」を、世界中の全ての人たちのために最大限に増やしていこうという、「二一世紀の壮大な教育イノベーション」なのです。


 これは、私が書いた「はじめに」からの抜粋です。本書を書こうと梅田さんと意気投合したのは、日本の人たちに、このウェブ(とりわけグローバルウェブ)によって初めて可能になった「二一世紀の壮大な教育イノベーション」について知ってもらいたい、という共通する強い気持ちがあったからでした。

 この本の帯には、「ウェブ進化 × 教育の進化 = 無限の可能性」という言葉が掲げられています。この「無限の可能性」を、活力や進むべき方向性を失ってしまったかのようにみえる今の日本の人たちに、「推進力」や「指針」として是非活かしてもらいたい。そんな願いが、梅田さんと私の対話の随所に込められています。

 オプティミスティックであり続けることが難しい状況に日本が既にあるからこそ、敢えてオプティミズムを堅持し突き通した私たちのメッセージや思いを、本書を通じて日本の皆さんにお伝えできることを、共著者としてとても嬉しく思います。